放射線による命の問題に直面する時代 武本 正見

2011年12月01日

 3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震に起因する「福島第一原発事故」によって、セシウム137を広島原爆150個分、セシウム134を300個分放出されました。その結果、およそ大分県の半分ほどの面積が居住不可能になりました。

 夏休みに、湯布院の見成寺(日野 詢城 住職)をメイン会場に企画された「福島の子ども疎開キャンプ」の参加者を募るため、6月末に福島を訪問させていただきました。その際、原発から 円形に広がる半径20キロの警戒区域の周りを車で走ると、凄まじい面積が失われたことを体で実感しました。「車で走っているこの内側がすべて居住不可能な地帯なんだ」と考えると、たいへんな恐怖感がわいてきました。また、福島の美しい自然の中、作付けされてない人気のない農村は、放射能被害の虚しさを訴えていました。

 福島原発事故によって7万人の人々が生活環境・仕事の場・信仰の場・子育ての場を長期間にわたり失いました。この被害は誰がどのようにしても償うことの出来ない状況です。

 福島原発事故から9ヶ月たちました。避難された方々、皆さん生活の立て直しのため必死に生きてこられたとおもいます。そのような国民の苦労・悲しみ・痛み・叫びを無視して、国・電力会社は、なぜ原発を擁護し推進するのでしょうか? また、何を目的として被害を矮小化しているのか、理解できません。国は今回の事故は、チェルノブイリ原発事故よりも放射線放出量は少なく、チェルノブイリのような被害は出ないと吹聴していますが、チェルノブイリ原発事故においては避難区域に相当する汚染された場所に現在もいまだに70万人が居住されています。

 原発災害が起きた時、2つの選択肢があるといわれています。財産を捨てて放射能から逃げるか、被曝する事を選択し財産を守るか。今回の事故で国は、被曝の被害が数年・数十年後に発生する事実を伝えず、被曝する事を強要しているように思えます。過去の原爆被害、原発事故の様々な研究機関の統計を無視して、国民に放射能被害は出ないと宣伝し,諸外国では避難基準にあたる場所に居住を薦め、財産の賠償責任を免れようとしているように感じます。

 今、福島では命の問題が渦巻いています。京都大学原子炉実験所准教授の小出裕章氏などが信用されるジョン・W・ゴフマン博士の統計によると、もし放射能除線も避難基準も改定せず、今のまま汚染地域に居住を続ければ今後30年間で、2万人程の被害が想定されるとのことです。

 私たちは40億年の生命の歴史を持った遺伝子を頂いています。そしてその遺伝子はお父さんの染色体23本、お母さんの染色体23本の2つのペアーが交わることであらたな命が誕生します。遺伝子は23組ありますから両方を2×2×2×…23回掛け合わせると70兆になります。お父さんお母さんの受精卵から生まれる命は70兆の可能性があります。つまり、私たちは40億年の歴史を持った70兆分の一の奇跡の命を生きています。放射線は遺伝子を攻撃します。遺伝子の結合エネルギーは小さく、僅か、数エレクトロボルトです。一方、放射線は非常に大きなエネルギーを持っており、γ(ガンマ)線10万エレクトロボルト、β(ベータ)線60万エレクトロボルト、α(アルファ)線500万エレクトロボルト。子供が手をつないで歩いている所にダンプーカーが突っ込んでくるようなものです。

 遺伝子が破壊された細胞は癌の原因になります。

 生まれてくる赤ん坊は、この世がきっと安全な所だと信じて生まれてきます。まさかこの世が人間の業によって、放射能で汚された世の中だとは想いもよらないでしょう。「私たち大人はどのように説明したら良いのでしょうか?これから生まれてくる赤ちゃん達に。」経済的利益と必要以上の豊かな生活のために、 福島を汚染させてしまった事を謝らなくてはいけません。私たちは想像しなければいけません。今コンセントに差し込んで使っている電気の一部が、これから生まれてくる子どもたちの健康や被曝者の犠牲の上に成り立っている事を。今、汚染地域では私たちの業が生み出した放射能により、子どもたちは命を削りながら生活しています。私たちは自覚しなくてはいけません。原子力に頼った贅沢・経済は、だれかの恐怖・悲しみ・・絶望そして幼い命を燃料としているのです。しかも原子力エネルギーを利用した後は、10万年以上にわたって放射線を発し続ける放射性廃棄物が生じます。私たちは刹那の贅沢のために、無限の負の遺産を子供達に残す日々を今日まで続けてきました。

 原発に囲まれた大分県。浜岡原発と同じように日本最大の活断層のとなりに立地し、巨大地震が起きる可能性が高く、しかも福島第一原発よりも耐震設計が 低く、津波対策もまったく出来ていない伊方原発と隣接する大分県。私たちの生活は脆弱な平和の上に成り立っているのかもしれません。

 自分と子どもの未来を後悔しないために、持続可能な未来を残すために、ただ問題意識を持つだけではなく行動しましょう。ただ問題意識を持っているだけでは世界は変わりません。 福島の事故以降、今この時代に生きる大人の決断行動が問われています。

 最後にガンジーの言葉です。

見たいと思う世界の変化に
あなた自身がなりなさい
ガンジー

宇佐組 西賢寺 武本 正見
教区報『遇我遇仏』24号